最終更新日:2024年9月10日
Charts updated October 9, 2024
概要:
- ピークシーズンに入った大手海運会社は、引き続き紅海を避けています。つまり、ピークシーズンの商品輸送にはより時間がかかるということです。
- 攻撃による最も大きな混乱を受けた船舶タイプはコンテナ船で、タンカーとバルク船がこれに続きます。
- 運河を通過する船舶数は依然として低水準のままです。 ピークシーズンにもかかわらず、2024年8月は2023年と比較して68%の減少が見られます。
- トランジットタイムは、東南アジアから米国東海岸へは47%、欧州へは33%増加しています。 中国から欧州へのトランジットタイムは25%増加しています。
- 運航スケジュールは依然として5~7日遅延していますが、2月以降は4日の改善が見られました。
イエメングループのフーシ派、引き続き商業船舶を標的に
反政府勢力のフーシ派は、紅海における商業船舶への攻撃を継続しており、世界サプライチェーンに大きな影響を与え続けています。 現在は原油タンカー「Sounion」号が紅海でこのような攻撃を受け、炎上しています。海に原油が流出すれば生態系への深刻な脅威となるでしょう。
米国を含む複数国の軍事防衛努力にもかかわらず、フーシ派は依然としてひるむ様子を見せておらず、10カ月以上が経過しても攻撃が解消される兆しはありません。 大手海運会社はリスク軽減のため、引き続きこの地域を避けています。
スエズ運河を通過する貨物量
2023年後半に攻撃が開始されて以来、大手海運会社の何百隻もの船舶は紅海を避けるために航路を変更しており、その結果としてスエズ運河を通過する船舶数は歴史的な減少を見せています。 海上輸送のピークシーズンにもかかわらず、8月には運河を通過したコンテナ船舶数はわずか155隻であり、2023年8月と比較して68%減少しました。 この傾向は今後も続くことが予想され、紅海の緊張が解消されるまで、海運会社はアフリカを迂回するか、あるいはパナマ運河を使用するとみられます。
下記のチャートは、さまざまな船舶タイプと運河を通過する頻度を示したものです。
最も大きな影響を受けているのはコンテナ船ですが、紅海を避けるために航路を変更しているのはコンテナ船だけではありません。 バルク船やタンカーも大幅に減少しています。 特にタンカーは、原油などの危険物を運ぶことが多く、攻撃を受けた場合は環境に大きなリスクをもたらします。 一般貨物船やRORO船はそれほど深刻な影響を受けていませんが、スエズ運河を通過する船舶の中で、これらの船舶タイプが占める割合はすでに低下しています。
トランジットタイムへの影響
船舶が紅海を避けて迂回するようになったため、従来スエズ運河を通過していた航路のトランジットタイムは、平均で7~10日増加しています。 下記のチャートは、8月までの月次記録による主要ルートのトランジットタイム中央値を示したものです。
配送シーズンのピークが近づく中、トランジットタイム中央値は約2ヶ月に急上昇しています。 電子機器、衣類、アクセサリー、靴などの主要輸出国である東南アジアは、特に大きな影響を受けています。 米国東海岸への配送時間は47%、欧州への到着にかかる時間は33%長くなっています。 もう一つの主な消費財供給源である中国から欧州へのトランジットタイムは、25%増加しています。 中国から米国東海岸への出荷は通常、紅海ではなくパナマ運河を通過するため、影響を受けていません。
ホリデーシーズンに向けて準備を進めている小売業者は、長引くトランジットタイムに対処するため、発注スケジュールを調整する必要があります。 そうしなければ在庫不足に陥ったり、時間厳守の貨物が遅れて到着したせいで販売に間に合わなくなり、在庫量が急増したりする可能性があります。
紅海の緊張の影響を最も強く受けているのはアントワープ、ハンブルク、ロッテルダムといった欧州の港湾であり、アジアからのトランジットタイムは約2週間増加しています。 米国では、サバンナやノーフォークなどの港湾でトランジットタイムが5~9日増加しています。 米国東海岸への貨物は、パナマ運河を経由するというオプションがあるため、遅延の一部を相殺できますが、欧州の海運業者の選択肢は少なくなっています。 北極ルートを使用できる設備がない限り、大半の海運会社はスエズ運河に頼らざるを得ず、遅延状態はさらに悪化しています。
以下の船舶スケジュール信頼性チャートは、スケジュールの更新に基づいて、輸送中のコンテナにどの程度の遅延が予想されるかを追跡したものです。
海運会社は喜望峰ルートの運航スケジュールをより正確に予測できるようになったものの、パフォーマンスはルート変更前よりも低下したままです。 トランジットタイムが長引けば、天候や港湾の混雑といった要因により、遅延が生じる可能性が高くなります。 海運会社が8月に経験した遅延中央値は5~7日でしたが、2月以降は4日の改善が見られます。
スエズ運河を通る貿易の歴史:
スエズ運河は、地中海と紅海を経由して北大西洋とインド洋を接続するために1869年に開通しました。 それ以来、グローバルサプライチェーンにとって不可欠な貿易航路となり、アフリカを一周するのに必要となる7~20日間の移動を船舶は節約できるようになりました。 2021年に船舶が立ち往生し、6日間運航が停止したときに見られたように、船舶の流れが途絶えると貿易に大きな影響を与える可能性があります。
スエズ運河の安全な通行は妨げられており、このルートの遅延は続いています。 パナマ運河の通航可能量は干ばつの影響で低下しており、米国はアフリカを回るよりも良い選択肢があることに多少安堵しているものの、特に欧州では、パナマ運河を通航できない船舶被害は依然として深刻です。
最前線の船員の安全に対する懸念
project44は、紅海の危機に関する最新情報を頻繁に報告することを優先していますが、この困難な時期においても、これらの船舶の乗組員の安全が最優先事項であることに変わりはありません。 被災された方々とそのご家族に心よりお見舞いを申し上げます。
概要
紅海で反政府勢力のフーシ派が商業船舶を攻撃し続けているため、特にスエズ運河を通過する世界の海上輸送ルートは深刻な影響を受けており、大幅な遅延や混乱が生じています。 海運会社は船舶の航路変更を余儀なくされており、その結果、アジアと欧米、そして米国を結ぶ主要貿易ルートのトランジットタイムは最大47%増加しています。 航路変更は欧州の港湾に最も大きな打撃を与えていますが、米国東海岸ではパナマ運河が代替航路となるため、それほど大きな混乱は生じていません。 緊張が続く中、最前線で働く船員の安全が引き続き最優先事項となる一方で、世界のサプライチェーンは引き続き不確実性に直面しています。